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水上 怜奈(みなかみ れいな) 「ダンタリアン」の契約者。19歳。 外見は小柄で背中が隠れるくらいの茶髪。 両サイドを頭の上で二つに分けて纏めた、いわゆるアスカヘアーで、派手可愛い服装が好み。 ごくシンプル(単純とも言う)な思考の我が道を行くお調子者。 学校町東区の某マンションで一人暮らしをしている。 「ダンタリアン」の「無数の顔」「幻覚を見せる」と云う設定を拡大解釈して、人間はもちろん都市伝説にも「変身」する事が出来る。 バイト先の古本屋の店長には頭が上がらない。 都市伝説「ダンタリアン」 ソロモン72柱の悪魔の一体。「善」「寛大」「善良ゆえの愚鈍」を司る。 無数の老若男女の顔を持ち、右手に本を携えて現れる。 その本には総ての生き物の思考が書かれており、他人の秘密や内心を読みとり知ることが出来る。 また、遠く離れたところにも幻覚を送る能力を持つ。 ページ最上部へ
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学園祭に向けて準備が進められているとある放課後、双子の姉妹である「犬神憑き」の契約者、天倉紗江と「怪人アンサー」の契約者、天倉紗奈は家路へと歩いていた。姉妹の後ろを、「犬神憑き」の内の一匹の黒い大型犬がついてきている。 「紗奈ちゃんのクラスの出し物、執事・メイド喫茶だっけ?」 「うん、そうだよ。今、荒神先生にも執事服を着せようってクラスの有志で追いかけてるんだけど…なかなか捕まってくれないんだよねー でも、獄門寺くんや小鳥遊くんも手伝ってくれてるんだもの…絶対に執事服を着せてみせる! 紗江ちゃんのクラスは?」 イベントや行事に対してやる気を見せる紗奈。 今回の場合、やる気に加えて普段白衣を着ている荒神先生の執事服を見たいという好奇心もあり、有志の一人として先生を追いかけていた。追いかけられている先生にとってはたまったものではないだろうが。 「(あ、荒神先生も大変なんだなぁ…) 私のクラスの出し物は『ワクワクトレジャーボックス』だよ。手錠で繋がれた男女1組がペアを組んで、校内に置かれた箱の中から手錠の鍵を探すの。箱には鍵以外にもいろいろ景品が入ってて、空けた人が貰えるんだよ。 執事・メイド喫茶かあ…紗奈ちゃんのメイド服見たいなぁ。見に行ってもいいかな?」 「へぇ…なんか楽しそうだね。休憩時間に顔出しにいくからね。 紗江ちゃんなら大歓迎だよ!来てくれるの楽しみにしてるね」 「君たち…注射をしても…いいかな?」 和やかな空気は、毒々しい色の薬品の入った注射器を持って、ボロボロの黒いコートを着た注射男の登場によって霧散した。 「お断りします!」 「よくないっ!」 即答する紗江と紗奈。注射器の中の液体が都市伝説にも効くのか分からないので、念のため犬神を下がらせておく。 「そんなこと言わずにさあ…注射をさせてくれよぉぉぉ!!」 目を血走らせて姉妹に襲い掛かる注射男の攻撃を左右に分かれて回避。 紗江が注射器を持っている方の手首に手刀を打ち込み、取り落とした注射器を遠くへ蹴飛ばす。 紗奈が注射男の手首を取り、外側に返すようにして注射男の体制を崩して地面に倒した。 犬神が倒れた注射男の喉に噛みつく…首の骨が折れたのか、ごきり、と音がしてそれきり注射男は動かなくなった。 「そちらのお二方、少しよろしいですか?」 注射男を倒した直後、背後から声をかけられた。 二人が振り向くと、いつの間に現れたのか、黒いサングラスを付けて黒いスーツを着た男性が立っていた。 「…どちら様ですか?」 「…何か?」 「失礼いたしました。私は、都市伝説から一般人を守る「組織」という機関に所属している黒服…A-No.666と申します。 先ほどの戦いを拝見させていただいた結果、ぜひとも組織に貴女方のお力を貸して頂きたいと思い、お声を掛けさせていただきました。 私達と共に、悪事を働く都市伝説から罪なき人々を守ってはいただけませんか?」 突然の出来事に、しばらく考えていた二人が口を開いた。 「…わかりました。私達の力で、悪い都市伝説から家族やクラスメートを守れるなら…」 「…わかった。せめて、身近な人達は守りたいから」 こうして、天倉姉妹は組織に加入することになる。 組織の闇も知らないまま… 続く…?
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ドクター51 都市伝説という存在は、本来不安定なものである 名前も、姿形も、力も、心も 噂という不確定で不安定な要素で構成され、確固たる己というものを持ち合わせていない 個性の強い都市伝説が目立つだけで、はっきりとした自我を持つ都市伝説というのは全体の総数から比べればレアケースなのだ ミツキは口裂け女としてはごくごく一般的な存在だった ドクターとの出会いと存在があまりにもショッキングだったために、それに引っ張られるように現在の自我が存在してたのだが 今はそれが揺らいでいる 『同族殺し』と呼ばれた存在が消えてしまったのは、自分のせいだと 自分が変われたのだから、彼女も変われるはずだと安易に思ってしまったせいだと 彼女はまだ引き返せるところにいるのだと、勝手に思い込んでしまっていたせいだと 沢山の人達を今まで救ってきたのは、ドクターを中心にした皆であって、自分ではなかったのだと 自分を大事に思ってくれる人は沢山いる だが、自分にそれだけの価値があるとは思えなくなっていた そんな不安定な彼女の耳元で、何かが囁き続けている 《彼女と同じ存在になれば彼女の存在を取り戻せる》 彼女と同じ存在になる それは『同族殺し』になるという事 彼女と同じように『口裂け女』を狩り殺し喰らい取り込み、同じ存在になれば失われた彼女をもう一度呼び起こす事ができるかもしれない そんな確証など何も無い穴だらけの理屈にすら、心を揺さ振られるほどにミツキの心は折れかけていた 会いたい 助けたい ただそれだけなのに 声は強く強くなっていく そんな方法で彼女が取り戻せるわけはないのに、それだけしか方法が無いかのように声は無責任に囁き続ける 《お前が化物でないから、化物である彼女を惑わせたのだ》 何時の間にか具現化した鎌が、その手に握られる 「ミツキ」 声を掛けられるまで気付かなかった 何時の間にか目の前には心配そうな顔のドクターが居て、震えるミツキの肩に手を掛けていた 「君は充分に頑張ったんだ」 「でもっ……私が言葉を間違えなければ! 払い除けられても無理矢理あの手を掴んでいれば!」 《殺せ、化物になれ、そして彼女を理解するのだ》 鎌を握る手に力が込められる 「やめろ」 ドクターの声は、ミツキに向けられたものではない ドクターの背後に現れたメアリーが、その力を揮おうとしていたのだ 「ミツキ……今回は助けられなかったかもしれない。だがそれに囚われていては、またいつか救いを求めてくる者に手を差し伸べる事が出来なくなる」 「ど、くた、あ」 「ボクは絶望しなかった。出来なかった事を出来るようになるために。だからこそ、メアリーともミツキとも出会う事が出来た」 《喋らせるな、邪魔をさせるな、殺せ、殺せ、殺せ殺せ殺せ》 「さっきから五月蝿いぞ貴様……まあそのお陰で位置は掴んだが」 ドクターの手が、ミツキの内側で囁いていた何かを掴み取る 《な、に!?》 「心霊治療というものを知っているかね? 疳の虫を取り除く老人の話は? ここしばらく、都市伝説の治療については色々と学んでいてな。催眠術などの類なら対応は難しかったが、外的要因があるなら話は別だ」 《な……なぜ、実体化していたわけでもない存在に触れる事ができる!?》 「錬金術師としてはまだ未熟者だが、認識したものを『触れる』ようにできる才能は元々あったようでね」 それは主に霊的存在や概念存在の女性に触れるためだったのだが ともあれドクターの手には小さな卵のようなものが握られていた 「メアリー、ボクの実験器具ケースの六番から、七十五番のフラスコを」 「は、はいっ」 メアリーが荷物ケースから取り出したフラスコに、ドクターの掴んだものが入れられ、きゅうと音を立てて蓋をされた 「ホムンクルスを作り出すための密閉フラスコだ。脱出は不可能だと思いたまえ」 ドクターは満面の笑顔を浮かべて、フラスコの中の卵に語り掛ける 「さて……ボクの恋人を誑かそうとしてくれた礼だ、隅々まで健康診断をしてあげようじゃないか」 それまで悪意を囁き人を唆してきた『悪魔の囁き』の一つである卵は、身体があれば冷や汗の一つでもかいていたかもしれない 「丁度、都市伝説を人間にする実験にも検体が必要だったのだ。性別や肉体的外見のイメージが無いのであれば、ボクの好みでやっても構わんだろう?」 『悪魔の囁き』は、恐怖とは違う何かおぞましいものを初めて感じたのだった 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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マッドガッサー一味の接近戦闘戦力についてから 黒服さんからの話を聞いて、空になったジュースの缶をゴミ箱に放りながら俺は呟く。 「接近戦担当が少なくとももう一人ねえ」 しかも都市伝説に頼らないでも戦える強さの奴だ。 「下手をすればそのうえで何らかの都市伝説と契約している可能性もあるな」 Tさんがうなずきながら補足を加える。 「でもそうだとしたらなんで都市伝説の能力を使わないで生身で黒服さんの同僚と戦ったんだ?」 「契約している都市伝説が戦闘向けではないか、遠距離用の能力ということになるだろう」 詳しい情報がない今の状態ではこんな予測も当てにはならんがな。Tさんはそう言ってため息をつく。 そもそも唯一の目撃情報が『服の上からではわからない程度に、しかし確実に鍛えられたすばらしい筋肉。邪法の流派に囚われさえしなければ、すばらしきブラザーになったであろう』ってのがなー。 「なんつーか、独特過ぎて」 そう言ってTさんが買ったおかげで当たったもう一本のジュースを開ける。 「すみません、このような不確かな情報で」 「や、黒服さんのせいじゃねえよ」 まるで自分の不手際のように謝ってくる黒服さんに慌てて言い返す。真面目な人だから、こんなどうでもいい所とかでいらない心労を背負っていくんだろうなー。 そんなことを思ってジュースを啜っていると、 「元≪組織≫所属の者と≪組織≫の討伐対象が手を組んでいることになるのか」 ≪13階段≫の契約者と、≪爆発する携帯電話≫の契約者の顔写真を見つめている黒服さんを見てTさんが言った。 「ええ、そうなります」 「奇縁だな」 そう言ったTさんは黒服さんの顔をしばらく観察すると、深いため息をついた。 そして唐突に訊く。 「迷っているのか、それとも悩んでいるのか?」 「……?」 主語を言え! 主語を! 俺が心の中で叫ぶと、Tさんは質問の理由を口にした。 「その二人について、何か思うところでもありそうに見える」 そのせいでまた疲労が溜まっているようにも感じる。 そう言ったTさんに疑問顔だった黒服さんはああ、と答える。 「はい」 そしてぽつぽつと黒服さんは話してくれた。任務付けの生活を送っていたがそれでも心を無くさずに≪組織≫を嫌って離れていった≪13階段≫の契約者のこと。そして、≪組織≫から討伐対象に指定された≪爆発する携帯電話≫の契約者も調べてみれば彼の起こした殺人事件は正当防衛であったようであるらしいということも。 「同情か?」 全て聞いたうえで問いかけるTさんに黒服さんはしばし無言。でもやがて、 「……できれば戦わずに分かりあえればいいと、そう思います」 そう、ややためらいがちに口にした。 「そんなことでは早死にするかも知れんぞ」 若干厳しい声でTさんが言う。黒服さんはつい数日前に舌戦していた時とはうって変わってTさんに強い反対意見を言おうとしない。 「ですが」 弱くそう言いかける黒服さんの言葉にかぶるように鞄の中からリカちゃんが言った。 「お兄ちゃんも、そうなの?」 む? と唸るTさん。リカちゃんは同じ意味を持つ言葉をまた放つ。 「お兄ちゃんも、はやじに、するの?」 ――ああ、そう言えば、 「そうだよなー。リカちゃんだって、夢子ちゃんだってそうだ。なんだかんだで危なっかしいことやってたのに倒さずに分かりあったじゃねえか」 そう言うとTさんはまた唸り、 「確かにそうだが……」 「なら意地悪なこと言うなよ」 めっ。とおどけて言う。Tさんは渋い顔で、 「一応俺はそれで一回死んでいるようなものだから注意しているんだが」 「でも説教くさいのはいけないと思う」 めんどいし。教師連中思い出すし。 そう言うと、「まあ確かに」とTさんもうなずいた。やっぱりこの野郎もまともな生徒やってなかったんだな。 「≪組織≫から離れたくなる気持ちも分かるし、≪爆発する携帯電話≫にも――やりすぎだが同情の余地があるか。それに黒服さんには≪夢の国≫の件で多大な恩もあることだし、 ――もし俺が彼らと対峙することがあったなら」 そう前置きし、 「出来得る限り、彼らを殺さずに、そうだな――黒服さんの所に届けよう」 言った。そして、 「ただし、契約者や知り合いに一線を越えて手を出すようなら容赦はせん」 最後にそう付け加えた。 あーあ、 「せめてそいつらが男を女に変えるだけで満足するようならここまで話もこじれないんだろうなー」 空になった二つ目の缶をやっぱり放り投げつつ言うと、 「……はい」 「そうだな」 応じるように男二人分のため息が空中に溶けて、消えた。 巨大飛行型都市伝説についてへ 前ページ次ページ連載 - Tさん
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正義「ふあぁ、疲れたぁ。」 大王「全く。今日は事が多すぎた。」 勇弥「本当だよ。ゲームの世界に吸い込まれて、謎の怪物と戦って、で・・・。」 裂邪「ハァアァアアアァァァァァァアアアァァァァァァア・・・。」 ―――ここは『ユグドラシル』という町にある宿屋。 なんでも、【ユグドラシル】という大きな樹の都市伝説でできているらしい。 まさに自然の中での生活。地球の何処に行けば体験できるだろうか。そんな良い所だというのに・・・。 大王「何故、何をあんなに落ち込んでいるんだ?」 勇弥「あれが効いたかな・・・。」 ~10分ほど前、宿屋にて~ ここ『ユグドラシル』に着いて暫くして、宿屋で部屋を2つ借りた時、裂邪が 裂邪「さぁて、部屋に行くか、ミナワ、メリーさん、レイちゃん、ローゼちゃん、ライサちゃん♪」 と、裂邪が『俺は女の子達と一緒に寝るぞ』宣言を放ったので シェイド「待テ、弟達ハトモカク、貴様ト同ジ部屋ニ少女ガイルノハ大イニ問題ガアルダロウ。」 勇弥「無難に『男性陣』と『女性陣』に分けた方がいいだろ。」 というように煮えたぎる怒りを抑えながら、それを阻止したのだった。 ~10分ほど前、宿屋にて/終~ 正義「仕方ないよ。お兄ちゃんはミナワちゃんと毎日一緒に寝ているんだから。」 勇弥「そういうがなぁ、ってそうなのかよ!?」 赤青マント「重症だな。」 注射男「生憎だが、彼に効きそうな注射は持ち合わせていない。」 下男「ああ見えて、いざ戦場に出ればあの戦果。拙者達も彼には見習うべき所があるのかもしれないな。」 裂邪「何が悲しくて男だらけの部屋に寝泊りしなきゃなんねぇんだ!? つぅか、ミナワを返せ! 別れ際に俺の為に涙を流してくれたミナワを返せ!!」 大王「・・・あいつにか?」 正義「ところで、【ベッド下の男】は本当にそこでいいの?」 改めて、自分のベッドの下にいる【ベッド下の男】に正義が問い掛ける。 下男「いやむしろ、ここの方が落ち着く。そういう都市伝説なのだから仕方なかろう?」 正義「そうだったら良いんだけどさ。休まるのかと思ってさ。あ、大王もベッドでは寝ないよね。」 大王「ベッドどころか、俺は寝ないぞ?お前らも、・・・だよな?」 赤青マント「たまに寝るが、寝る必要は無いな。」 注射男「だいたい、町中で悠長に寝る事なぞ、野良には自殺行為だからな。」 白ワニ「まぁ、俺は下水道でのんびりしているけどな。シャアハハハ!」 正義「へぇ、そうなんだ。」 都市伝説の話はあまり聞けないので、正義はアニメを見るようなワクワクを感じた。 裂邪が寂しそうに部屋を出て行くのを見て、不安になりながらも、雑談を続ける事にした。 ―――一方、奈海達のいる女部屋では。 ミナワ「ぐすん・・・ごしゅじんさまぁ・・・ひっぐ・・・。」 泣きじゃくるミナワを皆で精一杯あやしていた。 コイン「あぁもう、泣かないの。落ち着いてよぉ。」トントン テケトコ「ふふふ、好きな人に甘えていたいの?まだ子どもね。」 楓「(ぱっと見ると、友達の面倒を見ている女の子達のような光景だが、これが全員都市伝説なのか。)」 奈海「だいたいさぁ、あいつの何処が良いのよ。私達にとっては未だに信じられない事なんだけど。」 ミナワ「ご、ご主人様は、優しくて、強くて、私の命を救ってくれた人なんです。」 奈海「命を救った!?あいつが?」 コイン「へぇ、あんなやつにそんな一面が・・・。」 メリー「酷い言われようね。」 奈海「本当に酷かったのよ?平気で正義くんの心を踏みにじるしさぁ! 虫けらみたいに都市伝説をコロすし。・・・でも最近はそんな話聞かないわね。」 楓「恋は人を変える、と誰かが言っていたような。」 ミナワ「・・・す、すみません。少し、一人にさせてください・・・。」 そう言って、ミナワは外へと出て行った。 コイン「・・・すごいね。愛とか恋って。誰かさんもしたら良いのに。」 奈海「うるさい!あ、そうだ。ねぇねぇメリーさん、レイちゃん、ライサちゃん。」 ライサ「?」 レイ「何?おねーちゃん。」 奈海「裂邪さんについて、色々訊いてもいい?」 裂邪の弱みを握るためか、それともただの興味か、こちらでも雑談が始まるのであった。 ―――優しい風の吹くこの町で、ゆっくりと時間が流れていく――― 舞い降りた大王CoA編第5話「一時の休息」―完― 前ページ次ページ連載 - 舞い降りた大王
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誰の馬だろう。 それが王隠堂ひまわりが始めに思った事だ。 ひまわりの家は広い。西洋好きの祖父と日本好きの父親の増改築により、洋室と和室が斑になった奇妙な家である。 ひまわりも、全ての部屋を見た事が無い。とは言え、庭に真っ黒な馬がいれば知っているはずである。 馬は首が無くても大丈夫なんだろうか。 それが次に考えた事だ。 「何あれ……?」 大丈夫なわけがない。小学校高学年程度の知識しか持たないひまわりでも、それぐらいわかる。 ガチャリと、重々しい金属同士が当たる音。 何の音かと見れば、時代錯誤甚だしい西洋の鎧の騎士。 そして、その騎士にも、首が無い。 「二歩下がりな」 「え?」 どこからか声が聞こえた。目の前の騎士ではない。しわがれた女の声。 声につられ、ひまわりが下がった瞬間、目の前を何かが通った。 壁に刺さった剣。その剣の持ち主は目の前の騎士。下がらなければ、頭が切れていただろうその攻撃をしたのは、 都市伝説「デュラハン」 「逃げた方がいいかな……?」 デュラハンが明らかな殺意を持って攻撃してきた事を認識し、ひまわりは駆け出した。 「どこに逃げる……?」 ひまわりの足はそれほど速くない。 逃げるなら、誰かに助けを求めたいが、今、ひまわりの家には誰もいない。 兄は大学へ、大きい姉は図書館へ行った。小さい姉は昨日ふらふらと出て行ったきり。 母も父も、家にいる事の方が少ない。今日にかぎってハウスキーパーは休みだ。 ガチャリ、ガチャリと金属の音が屋敷に響く。走るひまわりから離れずについてくる。 「そこを右に曲がりな」 「誰?」 先程の年老いた女の声が聞こえる。 「助かりたいだろう。なら言う通りにしな」 声に従い、迷路のような屋敷を右へ左へと駆け回る。そして、少しずつ少しずつ、デュラハンの鎧の音が遠ざかる。 「そこの部屋に入りな」 その部屋は和室。 そして、部屋の中央にふわふわと浮かぶ、半透明の老女。 「おばあさん、誰?」 「ふん、浮いてんのと、半透明なのは無視かい。ま、アレの孫に私らへの恐怖心なんか期待しとらんかったがね。 わたしは都市伝説だよ。」 「都市伝説?」 「詳しい説明は父親にしてもらいな。今はあの首無しを何とかしないといかんだろ。」 そう言うと老女はふわふわと漂うように部屋の隅に移動する。そこには、 「これ、使いな」 黒い鞘におさめられた、奇麗な日本刀。 「契約と行こうじゃないか」 反りと鎬をもつ湾刀。光に揺らめく銀色の刃先。その怪しい光とは裏腹に、切れ味など無い、模造刀。 子供が持つには長すぎるその刀を、ひまわりはよろよろとふらつきながら構える。 「首無しが来たら思いっきり切り付けな。私が許可する」 「分かりました……?」 いまだ状況が飲み込めていないながらも、力強く頷く。 ガチャガチャと騒がしく金属の音が近づいてくる。 そしてついにデュラハンが部屋の前に姿を現す。 「っ、やあっ!!」 その姿を確認すると、すぐさまひまわりは駆け出し、刀を振り下ろす。 キンッ が、それはあっさりとデュラハンの持つ剣に受け止められる。そして、 「ひゃっ!?」 そのまま剣を横に振るえば、ひまわりの軽い身体はあっさりと吹っ飛ぶ。 「い、たい……?」 気がつけば、握っていたはずの刀が無い。吹っ飛ばされた拍子に離してしまったらしい。 刀を捜そうと起き上がろうとしたひまわりの前にデュラハンが立つ。 「あ……」 死ぬかもしれない。ひまわりはそう思った。 「首無し、あんた刀に『触れた』ね?」 突如、老女が口を開く。 「そのうえ、振り下ろされてた刀を弾いて、強引に『動かした』ね?」 その口から漏れるのは、憎しみ、怒り、悲しみ。憎悪の、怨嗟の、そして、呪いの言葉。 「死者を弔う刀に何すんだい。」 周囲に満ちる、滝の音、赤ん坊の泣き声。 「「「「「『死ね』」」」」」 ガチャンッ、とデュラハンが倒れる。 都市伝説「滝不動」。正確には「滝不動明王」。山形最凶と名高い心霊スポット。 奉納された剣に触れてはいけない、動かしてはいけない。死者を蔑ろにする者に呪いあれ。 「大丈夫かい?」 老女がひまわりに尋ねる。 「あ、はい。大丈夫で、す……?」 結局、何が何だか分からぬまま、ひまわりは答えた。 「それなら、さっさと起きな。これから忙しくなるよ。 都市伝説について、契約について、私の事、戦い方、いろいろ教える事が多そうだ」 何故か楽しそうな老女を見ながら、ひまわりは自分の人生が大きく変わっていくような感じがした。 終
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愛人と美亜の試合が終わって、次の試合までの休憩時間の事 二人の試合開始前にその姿を見つけていた晃は、とことこ、と近づいていった そうして、くっくっ、真降の服の袖を引っ張った 「え?……あぁ、晃君ですか。こんにちは」 「……こんにちは。真降君も、試合を見に?」 「はい。まぁ、出場するチビ逹のお目付役兼手合わせ役かねてですが……そちらは」 「………試合、見に来た。優は出るけど、自分含めてみんなは、出ない」 試合に出ないのだから、神子の手伝いで実況の方に……とも、ちょっと考えていたのだが そもそも、自分ではうまくしゃべれないから無理だろう、と晃は実況係は辞退していた TRPGでGMをやっている際はすらすらと喋る事ができても、それ以外では少し、喋るのは苦手だ ………TRPGやる時のように、誰かになりきっていれば実況が出来ただろうか。流石に、試す気にはなれないが 「……さっき」 「?」 「愛人と美亜さんの試合の、前。慶次さん逹、見てた?」 そう、愛人逹の試合が始まる前 真降が慶次と郁の様子を見ていた辺りから、晃は真降逹の姿に気づいていた …遥の方は、気づいていたかどうかわからない。治療室に向かった憐の事で頭の半分以上が使われていたはずだから 事実、今も遥はまだ真降の方に気づいていないようだ 「気になること………あった?」 「……まぁ、少し」 ちらり、真降がもう一度、慶次と郁を見る 二人は、試合の合間にフリー契約者の資料に目を通しているようだった あの契約者は来ていないらしい、等と話しているのが少し、聞こえてくる 「彼の担当黒服が彼を見る視線が、少し……」 「………?………慶次さんの担当黒服、郁さんじゃ、ない」 「あれ?」 「………慶次さんの担当、は。赤鐘 愛百合の方。ANo」 少し考えている様子の真降 納得がいったのか、あぁ、と声を上げる 「そうだ、郁さんはかなえさんの担当でしたね」 「ん、そう………郁さんも、慶次さんと一緒にいる事、結構多いけど」 ややこしい、とは晃も思う 強行派である愛百合からの影響を少しは薄めようとしているのか、慶次はかなえと郁と共に行動する事も多いのだ 最近では、その二人どころか天地と組むことすらあると言うが ……と、真降が「あれ?でもそれじゃあ……」と、新たな疑問が浮かんだようではあったが 「…あ、次の試合、始まる」 そう、次の試合が始まる 遥が「げ」と言う声を上げているのが聞こえてきた 次の試合の出場者の片割れは、遥が「絶対にかなわない」と常に言っている、あの人だ 対戦相手であるその女性を、キラはじっと観察した 長い黒髪は頭の天辺でポニーテールにされており、銀色のリボンで結ばれている。翡翠色の瞳は、まっすぐにキラを見つめ返してきていた 武器らしい武器は持っていない。服装はパーカーにジーンズと、戦闘用なのか地味な格好だ (……日景 アンナ。「首塚」所属……日景 翼とセシリアの娘にして長女。日景 遥の姉) キラがすでに持っている情報は、それくらいだろうか。確か、遥より二つ年上……今年で18歳だったはず 対してアンナの方は、どの程度キラの情報を持っているのだろう 実はお互い、契約都市伝説に関する情報は与えられていない 試合の中で、相手の契約都市伝説を見抜け、と言うことなのだろうか 『それでは、第5試合、開始っ!!』 開始の合図 小さく、アンナが笑った 「はーい、それじゃあ………年下相手でも、容赦はしないわよ?」 アンナが、静かに構えた あれは、何の格闘技の構えだったか………どちらにせよ、戦闘方法は接近戦か 契約都市伝説も、接近戦闘向きのものなのだろうか 油断なく、キラは手元に氷の剣を作り出そうと……… 「え?」 ……どろり、と 氷の剣の表面が、溶け始めた それに驚いた瞬間、アンナが地を蹴り接近してくる 繰り出された拳を避け、一旦、距離を取った もう一度、氷の剣を作り出しながら、ちょうどよい距離を保とうと ぐちゃり 「っ!?」 地面の感触が、おかしい 見れば、どろり、と、地面が溶けてきているような…… (これは……彼女の契約都市伝説の正体と、能力を把握しないと、危ない) アンナもアンナで、キラの契約都市伝説を見定めようとしている気配がある どちらが先に見抜くことが出来て対応できるか、まさに、それが求められようとしていた to be … ? 【死を従えし少女 寄り道「キラの戦い」 へ】 前ページ次ページ連載 - 次世代の子供達
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ゆっくりと、夕日が沈んでいく 夕暮れ時、黄昏時 都市伝説の、時間 「…むぅ」 そんな、時間帯 一人、とぼとぼと歩いている少女の姿があった 少女、ニーナは小さくため息をつく 「…本当、私は未熟デス。クールトーを逃がしてしまうだなんて…」 一ヶ月以上も前の出来事 それを、未だに彼女は引きずっていた クールトー 悪魔的な存在と遭遇しながら、無様に踏みつけられて意識を失い、逃げられた …あれが、もし、人を害していたら それは、逃がしてしまった自分の責任ではないか 「………我らが主よ、どうか、私を罰してください………」 自分を罰する方法を、考え続けた しかし、考えはまとまらず…………ただ、自己嫌悪だけを重ねていく 遭遇した、凶悪な悪魔……都市伝説には、全て天罰を与えてきた しかし、それでも…クールトーを逃がしてしまったという責任は、彼女の小さな体に重くのしかかる 「…司祭様…」 そっと、胸元で揺れる木で出来た十字架……「ドッグウッド伝説」に触れる 悪魔を滅する為に、契約した都市伝説 司祭様から、与えられた力 この力を持ちながらも……自分は、こんなにも、無様 以前、倒せなかったドラゴンもそうだ たくさん、戦い方を学び、強くなったつもりだったけれど 自分はまだまだ、こんなにも、力が足りないのだ 「…こんな時………カイン司祭なら、どうしたのでしょう…」 自分の上司よりは、位が下の、とある司祭の事を思い出すニーナ 彼女に、都市伝説の力の使い方を教えてくれた青年 戦闘向きではない都市伝説と契約していたが、しかし、ニーナに戦い方をも教えてくれた青年だ 生真面目なあの青年だったならば、自分と同じような状況に陥った時、どうするのだろうか? ……いや、きっと、彼ならば、このような状況にはなるまい ますます、憂鬱な気分になって、とぼとぼと歩き続けるニーナ …くぅきゅるる お腹が小さく鳴る 相変わらず、空腹である 「……主よ、どうか、もっと、罰をお与えください……」 こんな、空腹よりも もっと、もっと、重い罰を 私は、それに耐え、悪魔を滅し続けますから 祈るように考えながら、ニーナは空き地に張ったテントへと、戻っていった …今日も、また 目標とする淫魔が見つからなかった事に、落ち込みながら 遠き、異国の地 とある、修道院にて その軒先を、一人の青年が掃除していた この国の男性にしてはやや背が低いが、整った容姿をしており、バランスの良い体格をしている 青年が、掃除を終えたところで……一羽の小鳥が、その肩に舞い降りてきた ちちち、と、囁きかけるように、青年の耳元で小さく鳴く 青年は、その小鳥を追い払う事なく、その囁きに小さく笑みを浮かべて耳を傾けていた 暖かな日差しの下、その様子はどこか微笑ましい光景だった ……しかし そこに、訪問者が近づいていく その気配を察したように、小鳥は飛び去ってしまった 「あ………」 飛び去る小鳥を、どこか寂しそうに見送る青年 …小鳥が完全に見えなくなったところで、訪問者がやってきた事に気付いた 「エイブラハム司祭…?何か、ご用ですか?」 「カイン司祭。お忙しいであうところ、申し訳ない」 青年…カインの元に訪れた男性…エイブラハムは、人の良い笑みを浮かべて、帽子を取った 白銀の髪が、日の光を浴びてきらきらと輝く 「ニーナの事を覚えているかね?」 「…?はい、覚えていますが。お………私が、彼女に都市伝説の扱い方や戦い方を教えていたのは、つい半年前までの事ですから」 彼女が何か?とカインは首をかしげた 実際の戦いの場に出た事がない自分が、ニーナに教えられる事は、そう多くなかった 戦い方とて、基礎を教え込んだだけだ ニーナと共に居た時間は、そう多くない そんな自分に、エイブラハム司祭は何の用でやってきたのだろう? 人ではない存在との戦い方について自身に教えを説いてきた司祭相手に、カインは疑問に思う 「ニーナは、今、日本にいるのだよ」 「……日本に?」 「学校町、と言う街だ。本当ならば、日本にいる「教会」のメンバーと合流させるべきだったのだが……手違いがあってね。彼女は、今、一人なのだよ」 「……!?彼女は、まだ子供だぞ!まさか、一人で行かせたのか……………ぁ」 驚きのあまり、素の話し方に戻ってしまったカイン エイブラハムは、小さく苦笑した 「周りに信者達がいる訳でもない。無理に言葉を丁寧にしなくとも良い」 「……ですが」 「まぁ、その生真面目さが君の良いところなのだがね」 話を戻そう、と表情を引きしめるエイブラハム …カインも、表情を引き締める 「…とにかく。今、ニーナは一人で、その学校街と言う街にいるのですね?」 「あぁ、そうだ……誰か派遣しようかとも思ったのだが、うまく人材が見つからなくてね………そこで、君に頼みたいのだよ。「教会」の一員である事を隠して、学校街に入り込み、ニーナの傍にいてやって欲しい」 「……「教会」の一員である事を隠して?何故ですか?」 「事情があってね……あの街は、本来、我ら「教会」にとって不可侵の地なのだよ……それでもなお、やらねばならぬ神の使命が、ニーナには、ある。その手伝いをしてやって欲しい」 「……私にできる事でしたら、協力します。すぐに、日本に向かう準備を整えます」 背筋を伸ばし、答えるカイン 詳しい事情はわからない だが、遠い異国の地で、あの小さな少女は心細い事だろう 自分が心の支え二なってやれるのならば、傍にいってやりたい 「あぁ…………頼みましたよ、カイン司祭」 カインの答えに、笑みを浮かべるエイブラハム その笑みの奥にあるものに、カインは気付かない それでは、と一礼して、立ち去っていくエイブラハム カインは、その背中を見えなくなるまで見送った ……ちちちっ、と 小鳥が、カインの元に戻ってきた その肩に改めて泊まり、首をかしげる 「……大丈夫だ。問題ない」 カインは小さく微笑むと、その小鳥をそっと撫でて…教会の中へと、入っていった 己に待ち受ける運命に 気付く様子など、カケラも、なく to be … ? 前ページ次ページ連載 - 我が願いに踊れ贄共
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赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤・・・・・・ 息子の入学式 仕事を途中で抜けて来た、俺の目に映ったのは・・・真っ赤に染まった、入学式の会場と、赤い海に転がる数多の肉片・・・妻と、息子の首・・・ そして、その中心に立っていたのは、血に濡れたカッターを片手に立つ、少年 俺の意識はそこで途切れた 子供「あれ、食べて良い?」 中年「ダメだ、仕事が先」 子供の指差す先には一人の女の子 こんな街中で食わせる訳には行かない 子供「むぅ・・・お腹すいた」 中年「仕事が終わったら食わせてやるよ」 子供「わ~い」 仕事、そう仕事 我々は「首塚の組織」 名前はまだ無い 出来ればカッコイイのが欲しいなショッカーとか大ショッカー的な 子供「おじさん?」 中年「ん?あぁ、行くぞ」 向うは、組織に属さない都市伝説の契約者の所 東地区の公園 もう辺りも暗く、人通りも無い 中年「以上が我々、『首塚の組織』です」 男「で?」 中年「貴方にも、協力して欲しいのですが」 男「知ったこっちゃねぇな、俺は俺が楽しければそれで良いんだ」 無駄足だったな・・・ 中年「そうですか、では・・・行くぞ」 子供「うん」 男「あ、少し待て」 中年「はい?・・・っ!」 振り返ると、男がニヤリと笑い 何かが飛来した 中年「コイツは!?」 子供「怪獣・・・?」 男「こいつは『モスマン』俺の都市伝説だ」 モスマン アメリカからカナダにかけて出現する怪物 1966年にヴァージニアで目撃されたのが最初らしい 赤い目玉と蝙蝠の翼を持つ、二足歩行する灰色の毛だらけのもので、頭らしいところがない グライダーのような飛び方で、飛行機より速いという 体長は2メートル半くで、空を飛ぶ生き物としても大物 真夜中に怪獣の鳴き声のような怪声を上げながら飛びまわり、人を襲う 男はモスマンの背に乗り、モスマンは飛翔する 男「行くぜぇ・・・少しは楽しませてくれよ?」 子供「あんな、高いと、食べられない・・・」 不満そうな子供 確かにこの子では空を飛ぶ奴には届かないだろう となると 中年「俺がやるか」 ここは公園 広さも十分だ 男「行くぜぇぇぇぇぇ!!」 こちらに急降下してくるモスマン 中年「来い」 静かな呟きと同時に中年の前に現れたのは様々な銃器で武装した兵士達 男「な―――!?」 中年「撃て!」 次の瞬間、兵士達の構えた銃器から放たれた弾丸がモスマンを貫き モスマンは墜落した 男「な、何なんだよ!?そいつ等は!?」 中年「コイツらは俺の都市伝説『死人部隊』 死人部隊 アジアにあるK国には死人を蘇らせた作ったという死人部隊があるという。 一度命を落とした人間であるので再び死ぬことはないためにどのような戦況であろうとも必ず相手を押し切ることができるという幻の部隊である。 もちろん、この部隊の存在をK国は否定している。 中年「要は、『死なない兵士』だ」 男「そ、そんなの反則じゃねぇか・・・」 まぁ、実際はバラバラになったりすると死ぬけどな 中年「あぁ、そうだ・・・一つ聞きたい事があった『夢の国』を知っているか?俺らの首領が欲しがってんだ」 『夢の国』、恐らくは『首塚』とも並ぶ最強の都市伝説・・・ 男「し、知らねぇ・・・」 中年「そうか・・・ん?」 腕を引かれたので見て見ると、そこには凄く期待に満ち溢れた子供の顔 中年「・・・良いぞ」 子供「やった!」 男「は・・・?」 子供が男の方を向く 男「ひっ・・・」 子供「いただきます・・・・・・んあ」 男「来るな!!こっちに来る ガブシュッ 子供「ダメだったね」 中年「まぁ、最初から余り期待はしてなかったしな」 子供「また仕事?」 中年「そうだ、『悪い組織』を倒す為の仲間集め、な」 子供「・・・おじさんは、どうして組織を倒したいの?」 中年「それは・・・」 脳裏に浮かぶのはあの少年・・・最初に会った時はカッターを、次にであった時には刀を血でぬらしていた・・・ 中年「たいした理由はないよ、行くぞ」 子供「あ、待って!」 大した理由じゃない そう、大した理由じゃない ただ、あの少年、いや今は青年・・・を仕留めて仇を取るか、もしくはただ、誰かに殺されたいだけだ 彼は知らない、事件の真相を 子供は知らない、自身が契約してる都市伝説のおぞましさを 彼らは知らない、この先にある悲劇を・・・ 前ページ次ページ連載 - はないちもんめ
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バールの少女・番外編 02 ソレが『組織』「本部」へやって来たのは、午後のお八つの時間を回ってからだった。 黒服?「おいたわしや……」 頭部をガスマスクで覆った黒服は、少女化した先輩の黒服の近くまで歩み寄って来た。 黒服?「嗚呼こんな、こんな身体になってしまって。ああもう、可愛いアホ毛まで生やしちゃって」 黒服Y「だれだっけ?」 周囲の黒服達の視線を集めながら、 目の前のガスマスク黒服は、よござんす、とばかりにガスマスクに手を掛けた。 黒服?「ん、あれ? 外れない! あ、あれ、ここがこうなって……。 む、ぐ、ぐぐ」 黒服Y「……」 ガスマスクを外そうと躍起になる黒服、 その様子に突き刺す様な視線を送る周囲の黒服達、 そんな中、黒服Yはガスマスク黒服の様子を見ながら―― 黒服Y「あ、もしかして"I"?」 黒服I「くおあああ! 外れない! 首、首が、しまるー!!」 * * * 黒服I「や、やあどうも、お久しぶりですY先輩」 数分の格闘の後、ガスマスクを脱ぎ捨てた黒服Iは まさに窒息寸前といった体だった。 黒服Y「ホント久しぶりだね~。あ、そう言えば 「辺境」に連絡入れたんだけど、誰も出てくれなくてさ。 全員出払ってるの?」 黒服I「実は、その事込みでお話したいのですが……」 そう言って黒服Iはチラと周囲に視線を送った。 先程まで痛いほどの視線を送っていた周囲の黒服達は ガスマスク黒服の正体がIだと分かると、何事も無かったように各自の仕事を行っている。 黒服Y「色々とアレな内容なんだね」 彼――尤も、今は彼女だが――の尋ねに、Iは小さく頷く。 黒服Yは黙ってIの袖を手に取ると、室外へとグイグイ引いていった。 黒服達の居るオフィス然とした部屋から出て、 無機質な印象を与える廊下を歩き、 黒服Yはとあるドアの前で立ち止まる。 すばやく左右を見回して、人の居ない事を確かめると 黒服YはIをドアの向こうへ引っ張り込んだ。 部屋の中は、使われていない小会議室のようだ。 この部屋には窓が無く、照明も切ってあるために 唯一の光は、床近くに設置された使途不明の青色ランプのみだ。 Yは後ろ手でドアを閉めた。 黒服Y「ねえ、後輩」 黒服I「どうしました?」 黒服Y「ワタシとアナタしか居ないからって、襲ったりしないでね」ウルウル 黒服I「……」 グーを作った両手を胸元に持っていき、やたら眼をウルウルさせるY。 黒服Iは口を真一文字に結んで、数秒の間両の眼頭を押さえた。 すぅぅぅぅ、と息を吐き出す。 黒服I「申し訳ありません、Yさん。その、何て言うか…… 悪ノリしてる時間が、あまり無くて、ですね……」 黒服Y「ごめん」 先程の表情から一転、Yは真剣な目つきでIを眼差した。 黒服Y「また、危ない事に巻き込まれたの?」 * * * 黒服Iは『組織』の中でも「辺境」という部分に属している。 無論それは「本部」の認可を受けたモノという訳ではなく、 事情を知る一部の間で通称として用いられている呼称だ。 「辺境」は――極端な物言いをするならば――『組織』から村八分を受けている。 そもそもの発端は、Iの上司である黒服Vが30年ほど前に「ある事件」に与した廉で その制裁として村八分を受ける事になった、という話らしいが 黒服Iはその辺の事情に詳しい訳ではない。 そういった事情があって、「辺境」のオフィスは「本部」内には存在しない。 黒服達の中でも「辺境」という存在を知らない者は多く、 知っていたとしても無視するか厄介者扱いするかのいずれかだ。 まともな対応を行ってくれるのは、黒服Yか禿の黒服くらいなものだし、 実際、「辺境」が手を付けた事件に関わる事も多かったのは、これらの黒服だった。 時折、黒服Iが『組織』に"出向"しては定例報告をおこないに来るのだが 用が済めば早々に引き上げてしまう。 このようにして、他の黒服に接触を図る事自体、何かあるのだという事――。 * * * 黒服Yの真剣な眼差しに対し、Iは慌てた様に突き出した両手をブンブン振った。 黒服I「いやいや違うんですよ。いえ、確かに厄介事には現在進行形で巻き込まれてますけど。 今回は、Yさんに渡す物があって来たんです」 黒服Y「渡す物?」 Iは懐から小さなガラス瓶、バイアルを取り出した。 差し出されたそれを黒服Yは黙って受け取る。 バイアルのラベルには黒字で"Rev-00.3(A-MG)"、 赤字で"対「マッドガッサー効果」用 「都市伝説」のみに使用する事"と記されている。 黒服Y「何これ」 黒服I「『マッドガッサー』のガス作用を解毒する薬剤です」 黒服Y「誰がつくったの」 黒服I「"マック"さんですよ」 黒服Y「ああ、黒服Mだね。なるほど……。 気になったんだけど、この"Rev-00"ってアレの事だよね」 黒服I「はい、そうです。「侵食率抑制剤」の事ですよ」 アレ――つまり、"Rev-00"とは「辺境」の事情を知る黒服達の間で 他言無用とされている薬剤である。 都市伝説と「契約」をおこなった「能力者」の中に 「取り込まれる」といった状態になる者がある事はよく知られている話である。 この「"Rev-00 侵食率抑制剤"」は「都市伝説」に「取り込まれ」、 「末期症状」に陥った「能力者」への使用を想定して作成された薬剤だ。 その名称こそ「抑制剤」だが、実態は「末期症状」にある「能力者」の 「都市伝説からの侵食率」を強制的に低下させるといったものだ。 黒服Mによると、『投薬試験のバイト』『脳は10%しか使われていない』といった 都市伝説から捻り出した代物らしいのだが、「辺境」の方針で『組織』へ報告はおこなっていない。 それ故に、その存在を知る黒服達もまたこの事を秘密にしている。 加えて、"Rev-00"の使用に際しても様々な禁忌や副作用が付いてまわる。 運用が非常に厄介な薬剤なのである。 黒服Y「確か、これって都市伝説自体への投与は危ないんじゃ?」 黒服I「ええ、"Rev-00"そのものは都市伝説への投与は禁止されています。 ただ、この薬剤"00.3"は"Rev-00"を基に作成された解毒剤でして "Rev-00"とは組成が全く違うから大丈夫らしいんですよ」 黒服Y「へぇー」 因みに、この薬剤を作成した黒服Mもまた「辺境」の一人である。 更に言うと、「辺境」のスタッフは上司であるV、部下のM、Iの3名のみである。 黒服I「この解毒剤の使用に関してなんですけど、2つ注意点があります。 まず1つは、「都市伝説」に対してしか投与出来ません。 そして、あと1つは――」 そこまで言うと、唐突にIの顔面の陰影が濃くなっていく。 背後からは「ゴゴゴゴゴ」という効果音まで響き始めた。 黒服Y「何だよ、早く言ってよ」 そして、緊張感が極限まで達した、その時。 黒服I「――臨床試験を、一切、おこなっておりません」パンパカパーン 黒服Y「……すごく危ないね、それ」 黒服I「あ、でも安心して下さい。"マック"さんが言うには大丈夫だそうですよ」 黒服Y「何故だろ、Mの言葉がすごく信用できない」 黒服I「とにかく、イザという時の為に取っておいて下さい」 黒服Y「くれると言うならなら貰っておくよ、ありがとう」 黒服I「あ、あとコレを」 そう言って、Iは再び懐へ手をやった。 黒い正方形のボックスを渡してくる。 黒服I「精神感応金属【オリカルクム】を含有するゴム弾です。64発しか用意出来ませんでしたが」 黒服Y「わあ、これが」 黒服I「"マック"さんの能書きでは、対象を一撃で昏倒させられる様ですね」 黒服Y「頭部か頸部、背骨に命中させさえすればね」 黒服I「あと効果は未知数ですが、霊体系の都市伝説にも有効だとか」 黒服Y「【オリカルクム】って入手しづらいからねー。 Mにありがとうって伝えておいて」 黒服I「あ、あとそれから」 黒服Y「なになに? まだあるの?」 黒服I「こちらは8発しか作成出来なかったらしいのですが、硝酸銀内臓の特殊弾丸です。 『マリ・ヴェリテ』に効果があれば良いんですけど。 ゴム弾と同様、殺害する事には向きませんが、無能力化する事は可能なはずです」 黒服Y「ありがとう。使うかどうかは別としてだけど。 使わないままであれば一番なんだけどね……」 黒服I「そう言えば、先程「辺境」に連絡を入れたとか何とか」 黒服Y「ああ、うん。 今マッドガッサーとかコーク・ロアとかで忙しいから 「本部」と一緒に動けないかなって思ったんだよ」 黒服I「そういう事だったんですか。 いやあ、実は「辺境」一同、辺湖市にいまして」 黒服Y「えー、自分達だけ避難したのー? 一緒に仕事しようよ」 黒服I「いえそれがですね、実は、知らない内に都市伝説と契約してしまったという 一般人の方がいましてですね、何やらパニック起してるようなんで とりあえず私達で落ち着かせてるという……」 黒服Y「そっかー、僕達じゃ辺湖に入りづらいからねー。 『イルミナティ』の目もあるみたいだし」 黒服I「実は……、その方の契約した都市伝説、『災厄を招く彗星』なんですよ。 最悪、彗星が地球に突っ込んで来ます。 そうなったら――"マック"さんの計算では地球の半分が消し飛びます。 悪い事に、その契約者の方、精神状態がかなりよろしくなくてですね……。 現地のフリーの「能力者」の方と説得をおこなってるんですけど……」 黒服Y「あはは、頑張れ。地球の命運は君達の仕事にかかってるぞ」 ポムポム 黒服I「いや笑い事じゃないですから! それ言うならYさんもメンドくさいとか言わないで頑張って下さいよ! 私達は支援に行けるかどうか分かりませんからね!」 それでは失礼しますよ、と黒服Iは暗い部屋から立ち去ろうとして―― 黒服Y「 I 」 呼び止められた。 Yは親指と人差し指を立て拳銃の形を取ると、Iに向けた。 黒服Y「死ぬなよ、後輩。――誰も殺すなよ?」 Yの言葉にをIはきょとんとした様子だったが、 やがて、ふ、と笑い、その言葉は先輩にもお返ししますよ、と応えた。 今度こそ失礼します、と言って、彼は「本部」を去った。 Yは依然、Iと秘密の会話を交わした暗い部屋に居た。 背中を壁にあずけ腕を組んだまま、目を閉じている。 黒服Y「分かってるさ、後輩。僕はちゃんと、分かってる」 彼は、少女の声で、そう小さく呟いたのだった。 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ